シェフラーが貫禄の連覇 弱点なき王者へ【舩越園子コラム】
タイガー・ウッズ(米国)がホストを務める「ヒーロー・ワールド・チャレンジ」は、大会創設から24年目、インドのヒーロー・モトコープが冠スポンサーになってからは11年目を迎えた。
今大会では、ヒーローとのスポンサー契約が2030年まで延長されたことが、大会ホストであるウッズと同社のパワン・ムンジャル会長によって誇らしげに発表された。
リブゴルフ創設以来、スター選手の姿がまばらになったPGAツアーにおいて、非公式戦とはいえ、この大会が2030年まで安泰となったことはビッグな朗報だった。
さて、肝心の試合展開に目をやると、最終日を単独首位で迎えたのは、ジャスティン・トーマス(米国)だった。2022年「全米プロ」制覇以降、勝利から遠ざかっているトーマスは、今年10月の「ZOZOチャンピオンシップ」で復活優勝に迫ったが、2位タイに甘んじた。
そして、今大会で再び優勝争いに絡んだが、サンデー・アフタヌーンに気を吐き、圧勝したのは、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラー(米国)だった。
2024年のシェフラーは「マスターズ」優勝を含む年間7勝を挙げ、フェデックスカップ年間王者に輝いた。5月には長男ベネットくんが誕生し、パリ五輪では金メダルを獲得。公私ともに充実した1年を過ごし、ディフェンディング・チャンピオンとして今大会に臨んだ。
年間を通じて、あらゆるデータがシェフラーの強さを物語ってきたが、唯一、彼の弱点と言われてきたのはパッティングだった。
PGAツアーにおけるシェフラーの2023年のパットのランキングは、驚くなかれ、162位という低迷ぶりだったが、2024年は77位までアップさせることに成功。しかし、世界ランキングでもフェデックスカップ・ランキングでも堂々1位を誇るシェフラーが、パットだけは77位というのは、あまりにもアンバランスで、彼自身、大きな課題であることを痛感していた。
それでも年間7勝を挙げたことは事実だが、2025年シーズンを見据え、「パッティングをなんとかしたい」と考えたシェフラーは、今週のヒーロー・ワールド・チャレンジでクロウグリップを採り入れた。
「長いパットを寄せることは、これまでも上手くできていた。ロングパットはレギュラーグリップのままでいい。問題は4.5メートル以内の短めのパットだ。カップに近づけば近づくほど問題だった」
その「問題のパット」にクロウグリップで挑んだ今週のシェフラーは、次々にバーディパットを沈め、とりわけ最終日は9バーディ・ボギーなしで「63」をマーク。2位のトム・キム(米国)に6打差をつけて圧勝し、大会史上3人目の連覇達成となった。
「とても満足だ。安定したラウンドができたし、去年に続き、今年も優勝することができた。4日間72ホールでボギーを2つにおさえられたことにも満足している。来季も安定したゴルフを続けたい」
ショートパットとミドルパットをクロウグリップで沈められるようになった今、もはやシェフラーに弱点は見当たらない。それは他選手たちにとって最大の脅威になったと言っても過言ではない。
柔和な物腰で、あまりガッツポーズも取らず、淡々とプレーするシェフラーは、険しい表情、派手なガッツポーズでゴルフ界に君臨してきたウッズとはタイプが異なる王者だが、今ではウッズを凌ぐ成績を収めそうな気配さえ感じられる。
そして年間7勝を挙げ、年間王者タイトルと金メダルを獲得しても、それでも試行錯誤を重ねて向上を図る謙虚さは、シェフラーの何よりの強みである。
多くのビッグネームが去り、少々さびしくなっている現在のPGAツアーを盛り立てていける筆頭がシェフラーであることは、もはや疑いようもない。黙々と戦う“静かな王者”の一層の活躍を祈るばかりだ。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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