低い投票率、どうすれば 【サヘル・ローズ✕リアルワールド】
一気に冬が顔をのぞかせていますが、みなさま体調はいかがでしょうか? 私は見事に風邪をひきました。こういう時に健康であることのありがたみが身に染みます。身体的な健康はもちろんですが、それと同時に心の健康も考えて、メンタルケアをしていかないといけないように感じます。そして毎日何かしら起きているので、人ごとだったことが自分ごとになるかもしれないと感じながら日々を過ごしています。
ですが、危機感というのは最初のうちだけで、例えば初めは危機感を持って見ていた報道にも慣れていく。「またか」「偏っている」とどこかで受け止めてしまう。10月27日の総選挙でも同様のことを感じてしまいました。アメリカの大統領選もそうです。そして同じ「選挙」でも国が異なるだけで全く違う。今のアメリカが以前のような力を持っているか?と聞かれればそれは違う。物価高で厳しい状況にある。日本も同様に物価高によって、本当に厳しい状況下に置かれている人々は増えています。そういう現実が「闇バイト」や「強盗」が日本で増えている要因の一つかもしれません。
本来、国の未来は個人の未来でもあるので、投票率が上がると思っていましたが、日本の投票率は年々下がっていく。ですがきっと若い世代は決して無関心ではない。実際私の講演会などでも自身の意見を持って発言してくださる人も多い。でも、投票率は今回も残念な結果だった。ある人の言葉が頭をよぎりました。日本の政治家には今「この人に投票したい」というカリスマがいない。
個人的な意見では、日本に限らず思うことですが、政治家にも定年退職が必要だと思っています。結局、重鎮である政治家同士で内部分裂が実際に起きているのも問題ではないだろうか? もはや党として成り立っていないはずなのに、離脱はしない。でも党の中で内部分裂が起きている。結局は党の力が欲しいだけに見えてしまいます。そういうのは国民には隠せないことであり、若い世代がそんな大人たちにどう投票すればいいのか・・・。
一方でアメリカ大統領選では若者たちが意見をはっきりと云っていた。「やっと選挙に参加できる」と喜ぶ人。今回のアメリカ大統領選から見えた日本の課題は、日頃から政治や世界情勢に関心を持つ機会を増やしていく必要があることだと思います。
その課題の一つが「メディアの変革」。日本ではあまりにもドキュメンタリー番組が少なくなっています。結果、世界が見える番組が少ないのが問題。そしてもう一つが討論番組。よくあるのが専門家同士の対話で終わる番組。なぜ、もっと国民の声や学生たちに討論させないのか? 「視聴率は真面目な番組だと取りづらい」とよく聞きます。といっても今、バラエティー番組が高視聴率というわけでもない。これは現場にいるメディアの人の問題ではなく、上層部の方々に伝えたい。
日本の未来に関わる番組、記事、本物を作りませんか? そして現場で頑張っているメディアの人にそういう機会を与えてください。一視聴者としての願いです。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 48からの転載】
サヘル・ローズ/俳優・タレント・人権活動家。1985年イラン生まれ。幼少時代は孤児院で生活し、8歳で養母とともに来日。2020年にアメリカで国際人権活動家賞を受賞。
記事提供元:オーヴォ(OvO)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。