ツアー復帰目指す2人は下部からの“再出発”にも笑顔 大山志保「忘れられない1週間」、大江香織「いい背中を見せられるように」
<JLPGA ファイナルQT 最終日◇29日◇葛城ゴルフ倶楽部 宇刈コース(静岡県)◇6454ヤード・パー72>
“ツアー復帰へ”という共通の合言葉を持つ2人が、来季のレギュラーツアー前半戦出場権を目指し出場したが、ともに確保はならなかった。
原因不明の難病を抱えながら、3週前の「伊藤園レディス」で約2年半ぶりにコースに帰ってきた大山志保は、トータル17オーバー・92位という結果で4日間を終えた。しかし、その表情はプレーできたよろこびを噛みしめるように笑顔だ。特に平均ストロークが『74.0291』(+2.0291)だった最終日は「73」で、途中まではアンダーパーでプレーしていた。「もう精一杯で…」とこぼすが、「最後まで諦めずに少しでも上に行きたいという気持ちで頑張りました」と“らしさ”を発揮した。
伊藤園に続き出場を予定していた2週前の「大王製紙エリエールレディス」は、体調不良により欠場していた。それでも強い意欲を示していたQTは、初日から「79」と出遅れたものの完走した。「ものすごく痛いけど、棄権だけは絶対に嫌でした。薬と気持ちだけでしたが、強くなるんです多分。長い人生の中で忘れられない1週間でした。私の中でベスト5ですね」。視線は常に前向きだ。
来年はステップ・アップ・ツアーが主戦場になるが、今後も治療を進めながら出場していくことになりそう。「まずは出場権を確保できたので、体全部を治さないと。ステップに出て、やっと3日回れたでは話にならない。もう少し気持ちよくプレーできるように治療法を見つけたい」。オフには同じ宮崎県の後輩で「初めて喋ったら、とてもいい子。親役でもいいですけどね。すごくいい子だから」と“惚れ込んだ”菅楓華との練習も約束している。最後は「まずはしっかり体を治します。来年またお会いできたら」と言って、会場を後にした。
そしてもうひとり、2019年以来のツアー復帰を目指す大江香織も、トータル15オーバー・90位という結果に終わった。ただ、「疲れました。ヘトヘトです」という表情は清々しい。先週のファーストステージを突破し、2週連続で4日間をプレーした疲労感は心地よさそうだ。
一度は引退を決意し、結婚、出産も経験。そのなかで同世代、特に“ママさんゴルファー”の姿に刺激され、トーナメントに戻ることを決めた。現在も2歳の長女の育児中。そのためステップ・アップ・ツアーの出場権は手にしたが、「たくさんの試合に出るのは、今の環境だと難しい。数は絞りながら、出られる試合で一生懸命頑張りたい」という形での“両立”を目指していく。
託児所が設置される大会も増え、ツアーとしてママさんゴルファーが活躍する環境も徐々に整いつつある。ファーストステージでも、それを利用してプレーに集中した。「すごい成績を出すために頑張るというより、後輩プロたちに、いい背中を見せられるように頑張りたい」という思いに突き動かされている。ただなにより、家族の支えが復帰への大きな力になっていきそうだ。(文・間宮輝憲)
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