目の前に集中し歴史的スコアに 川崎春花が確立した“自己流”「コツコツと…が自分には合ってる」
<大東建託・いい部屋ネットレディス 最終日◇21日◇ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(福岡県)◇6505ヤード・パー72>
試合のなかったオープンウィークを挟み、川崎春花が2試合連続優勝を果たした。4日間を1イーグル、28バーディ、2ボギーで回り、ツアー新記録となるトータル28アンダー。従来の最多アンダーパー記録を4打も更新という歴史に名を刻む1勝を、京都市出身の21歳はいつもの柔らかな口調でよろこんだ。
「毎日こんなに伸ばせたのは初めてなので、うれしいです。(同組の)三ヶ島かなさんと山下美夢有さんがずっといいプレーをされていて、お二人ともすごくお上手だったので、自分も頑張ることができたと思います」
「人前でゴルフをするのが怖かった」と悩んでいた昨年からの不調が遠い昔のような勝ちっぷりだった。単独首位から出て、一時は並ばれる場面もあったが、15番パー4からの3連続バーディで最後は4打差の逃げ切り。歴史的なバーディ合戦を、歴史的なスコアで制した。
通算2勝目を挙げた2022年10月の「マスターズGCレディース」から、2週前の「ミネベアミツミレディス」で復活Vを果たすまで1年9カ月を要した。その試合から呪文のように繰り返していた魔法の言葉を、今回も心の中で唱え、ときには声に出して、つぶやいていた。
「目の前の一打に集中、目の前の一打、目の前の一打…」
6月の「ニチレイレディス」で5位に入り、低空飛行からの脱出のきっかけをつかんだ。だが、続く2試合は最終日に失速した。「最終日に崩れてしまうのは、考え方が何か間違っているのかなと思った。いくつまで伸ばしたらトップ10だとか、そんなことを考えていた。自分の中で振り返りをして、目の前の一打にたどり着きました」。
「目の前の一打」は日米通算24勝、2010年に世界ランキング1位にも輝いた宮里藍の口癖だった。だが、川崎は¨藍ちゃんブーム¨をリアルタイムで知らない2003年度生まれ。国民的ヒロインの影響を受けることなく、自分なりの解釈から生まれたオリジナルな言葉が心の支えになった。
13番パー4の6メートルのバーディパットを決めて、前人未到のトータル25アンダーに到達。記録のことは前日初めて知った。「でも意識は全然なかった。長いのが入ってうれしかったので、またそこから集中できた」。集中力が欠けてきたときの黄色信号となる「ふわふわした感じ」に一度もなることなく、ゴールに飛び込んだ。
過酷な猛暑は家族のサポートで乗り切った。ラウンド中には薬膳料理、発酵食品の講師を務める母・雅子さんが作ってくれた糀(こうじ)甘酒を飲んでいた。飲む点滴とも言われるアルコール0%のスーパードリンクのおかげで体力面も不安はなし。連戦などで3キロ減の49キロになった体重はまだ戻っていないが、「先週は母が作ってくれた料理をたくさん食べたから」と最後まで元気いっぱい。トータル28アンダーをマークした「技」、目の前の一打に集中できた「心」、そして「体」とすべてが整っていた。
「目の前のことをコツコツと…が自分には合っている。それを崩さずにやっていきたい」。苦しい経験を糧にたどり着いた境地。自分のスタイルを確立させた川崎は、これからもっと強くなる。(文・臼杵孝志)
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