キッチンカー事業の寄付金をパンダの食事や竹製品アップサイクルに充当 岸和田市がソーシャル・エックス「逆プロポ」でMellowと共創
大阪府岸和田市は、キッチンカーによる公共空間活用事業を全国各地で展開する株式会社Mellow(東京都千代田区)と寄付に関する覚書を結び、同市の管理地内でキッチンカーが営業する実証事業を始めた。岸和田市は、里山保全のため伐採した竹をアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)で飼育されているジャイアントパンダの餌として提供し、食べられない幹部分などを竹製品にアップサイクルする「パンダバンブープロジェクト」を進めており、売上金の一部が寄付金としてプロジェクト経費に充てられる。
▽東京都のSU支援事業が縁に
実証事業は10月から2カ月間実施。岸和田市役所前にキッチンカーを設置し、10月は週2~3日、11月は週3~5日、午前11時半から2時間にわたり、カレーやから揚げなどを販売。10月は1カ月間で売上食数約400食、売上高約26万5000円の実績があった。実証事業の終了後は随時、公園などの市の管理地で本格展開していく。市にはMellowから売上金の一部がパンダバンブープロジェクトへの寄付金として支払われる。
Mellowは、東京都のスタートアップ(新興企業)支援事業「TOKYO SUTEAM」の協定事業者の株式会社ソーシャル・エックス(東京都渋谷区)が運営するアクセラレーションプログラムに参加し、第1期の最優秀賞を受賞した。その特典として、ソーシャル・エックスが提供している官民共創マッチングサービス「逆プロポ(逆公募プロポーザル)」を通じ、Mellowが「公共空間から収益を生み出し、行政内で再分配する仕組みを作りたい」という課題を全国の自治体に提示。応募自治体の中から岸和田市が選ばれた。逆プロポでは企業側から社会課題を提示、これに対し自治体がそのテーマに向けた企画やアイデアを提案し、プロジェクトをつくり上げている。
Mellowは16年に設立されたスタートアップで、キッチンカーなどの店舗型モビリティビジネスで日本最大級のプラットフォーム「SHOP STOP(ショップストップ)」を運営し、「公共空間での収益創出」に取り組んでいる。行政が管理する公園などを利用する際は、利用者が固定使用料を前払いする方式が一般的だったが、同社はSHOP STOPを活用し、売上の一部を支払いに充てる方式を提案。行政と連携した実証実験を通じ、新たな収益モデルを構築してきた。現在、SHOP STOPは営業場所1100カ所以上、登録店舗3200店以上に上り、これまでに実証実験を含め全国22都府県で営業を展開。引き続きエリア拡大を目指している。SHOP STOPの詳細はホームページで確認できる。
▽1食購入でパンダの枝葉10本分
岸和田市のキッチンカー事業では、食事客がキッチンカーで購入する1食分は、パンダが食べる枝葉約10本分に相当するという。パンダの飼育には餌になる良質の竹が欠かせないが、1994年にアドベンチャーワールドで飼育が始まった当初はまだ頭数も少なく、白浜町近隣で賄えていた。2000年以降は頭数が増加し、新たな採取場所を確保する必要が生じた。このため竹林整備に取り組んでいた岸和田市と、アドベンチャーワールド(株式会社アワーズ)が竹の提供に関する協定を11年に締結した。同協定は20年に、より幅広い環境保全の観点から「SDGsパートナーシップ協定」に刷新。22年には白浜町も含めた「パンダバンブーSmile広域包括連携協定」が結ばれた。
こうした公民連携により、現在は飼育しているパンダ(4頭)が食べる量の半分、年間約8トンの竹の枝葉が岸和田市の丘陵地にある市の管理地から供給されている。同時に、パンダが食べない竹の幹部分などを有効資源としてアップサイクルする「パンダバンブープロジェクト」を推進。幹は主に集成材に加工され、工芸品や日用品などの原材料として使われている。集成材として使えない部分も、チップ化して舗装材として活用したり、今後はエネルギー利用やバイオ炭の生成でJ-クレジットを創出したりすることも検討している。
また、7~9月には「パンダの聖地を竹育の聖地へ」をキャッチフレーズに、岸和田の竹5000本を使い高さ10メートルの巨大アート「きらめく丘」をアドベンチャーワールド内に造る「パンダバンブーアートプロジェクト2024」のクラウドファンディングも実施。1000人以上の支援者から目標金額を上回る1900万円余りの資金が集まった。クラウドファンディングのリターンとして、10月から1年間にわたる、きらめく丘を活用し「いのちがつながる・踊る!」をテーマにしたイベントが始まっている。
記事提供元:オーヴォ(OvO)
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