自由な発想と程よい恐怖 80年代のオムニバスホラーがリクエストで復活 『デビルゾーン』
飯塚克味のホラー道 第103回『デビルゾーン』
知っている人も多いと思うが、今年の夏、NBCユニバーサルとAmazon.jpが組んで、購入枚数が500枚に達したら、商品化が実現するというキャンペーンが行われた。候補に挙がったのはレンタルビデオ時代に人気を博した10作品。いずれも実現すれば初ディスク化となる。時代が時代なら、低価格の廉価版でリリースされたかもしれないタイトルだが、すでにパッケージソフトは苦境に立たされており、出せば売れるという時代は過ぎてしまった。自分としては全タイトルが売れてくれたらベストだったが、それでも6タイトルが予約枚数に達し、商品化が実現することになった。今回は、その中から、一番早く規定枚数に達した『デビルゾーン』を紹介したい。因みに商品化が実現したタイトルは予約分のみの限定生産ではないので、これからでも購入可能だ。
さてその『デビルゾーン』だが、1983年に製作され、日本公開は翌1984年1月28日だった。監督は『地球爆破作戦』(1970)や『サンシャイン』(1973)、『サブウェイ・パニック』(1974)のジョセフ・サージェント。80年代に入ると本作や珍作『ジョーズ’87/復讐篇』(1987)、テレビ映画などを多く手掛けてきた職人肌の監督だ。
本作は4編からなるオムニバス映画となっている。第1話はチェーンスモーカーの女性が、タバコが切れてしまい、ニュースで殺人鬼がうろついている夜の街に買い物に出る話。第2話はゲーム中毒の少年が、夜中にゲームセンターに忍び込み、どうしてもクリアしたかった最終ステージに挑むが、それはゲームの世界に入ることを意味していたというもの。第3話では信仰心を失った神父が、車で旅に出ると、謎のトラックが襲ってくる。第4話では家の中で巨大なネズミが出現し、そこで暮らしている家族を悩ませる。いずれも元ネタは分かりやすいし、非常に教訓めいたエピソードなのも時代を感じさせる。だが今観ても、本当に面白いし、お腹いっぱいにしてくれる。
出演者も第1話のチェーンスモーカーの女性は『センチネル』のクリスティナ・レインズ、第2話のゲームマニアはエミリオ・エステヴェス、第3話の神父役は『エイリアン2』のランス・ヘンリクセン、第4話の主婦は『エイリアン』のヴェロニカ・カートライトと知名度の高い面々が揃っているのが、何とも嬉しい。
初公開は1984年の1月28日。正月映画が一段落して、春休みまでの閑散期だったということもあり、高校生だった自分は映画館では見逃してしまった。後にレンタルビデオが出た時に見ているのだが、とても楽しませてもらった。同時期、スティーヴン・スピルバーグが製作した『トワイライトゾーン/超次元の体験』(1983)が公開されたこともあって、便乗したようにも思える企画なのだが、今見ても、なかなかどうして、しっかりとした作品になっていた。もちろん合成のチープな感じなど、直せないものもたくさんあるが、それを含めて味わい深いのだ。
ブルーレイの画質は特段、高画質という訳ではないが、今の大型テレビやプロジェクターで再生しても何の問題もないクオリティになっている。音声もモノラルだが、dts-HDマスターオーディオで収録されており、肉厚なサウンドを再現できるはず。特典は予告編が収録されている。
80年代の雰囲気を存分に楽しめるホラーとして、是非ともお勧めしたい一品。あの頃、レンタルビデオ店で血眼になって、傑作がないか、棚を探しまくった世代なら、本作の魅力を理解できるはずだ。存分に楽しんでもらいたい。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【商品情報】
【Amazon.co.jp限定】デビルゾーン
https://amzn.asia/d/cBdoKwT
4,980円(税込)
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記事提供元:映画スクエア
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