旅YouTuber、アフガニスタンでタリバンと48時間生活
旅系YouTuber「Bappa Shota」(登録者数93万人)が19日、「イスラム原理主義タリバンと48時間生活してみた」という動画を公開しました。
旅系YouTuber、アフガニスタンの実態を探る
「BappaShota」(バッパー翔太)とは、“悔いのない人生に”をテーマに掲げ、世界中を旅するYouTuberです。19歳のときに日本を離れた彼は、バックパッカーとして今までに25カ国以上を巡っています。翔太の動画は単なる観光にとどまらず、現地民への取材を通して地域の実態を紹介するドキュメンタリーとしても指示を受けています。
翔太が今回訪れる国はアフガ二スタン。ネガティブな情報が多く飛び交うこの国の実態を自らの目で確かめべく、ドバイから首都カブールへと旅立ちました。外務省はアフガニスタン全土の危険レベルを、4段階のうち最大レベル4の「退避勧告」としており、翔太は事前の許可取得や準備に苦労しながらも、念願の渡航を果たします。
カブールのマーケットを訪れた翔太は、「いつの世界!?」と声をあげ、昔ながらの光景に驚きます。地元の人々は非常にフレンドリーで、翔太は何度もお茶に招待されるなど温かいもてなしを受けました。
服装に関しては厳格な規律があり、男性はカミースと呼ばれる民族衣装の着用が義務付けられているようです。短パンを着ていた翔太は、タリバンの兵士に5回も注意を受け、ついにはカミースを購入して着用することにしました。
市場には銃を売る店もありましたが、この国で銃を所持するには許可が必要だといいます。
地元のレストランでは羊肉のバーベキューを堪能しました。羊肉の串焼きが6本に、パンと野菜とヨーグルトがついたセットが約2ドル80セント。日本円に直すと400円ほどだそうです。レストランでは男性と女性が食べる場所が分かれているのだとか。
アフガニスタンは宗教戒律が厳しいことで知られていますが、女性のみに対してはさらに多くの規律が存在し、「世界で最も女性が生まれてくるのに最悪な場所」と言われているそうです。
「女性を大切にしなさい」というイスラム教の戒律をより厳格に捉えた結果、12歳以降の女性の就学や仕事を禁止する規律などが生まれたといいます。また、2021年のタリバン政権の復帰以降、女性は公共の場では、顔と全身を覆うブルカという衣装を着用しなければなりません。
タリバンの拠点・カンダバールへ
首都カブールの次は、イスラム原理主義組織として知られるタリバンの実態を探るべくアフガニスタン第2の都市・カンダハールを訪れました。
カンダハールはタリバンの中心的拠点であり、保守的、伝統的な色合いが強いことから「アフガニスタン内で最も部外者を拒んでいた地域の1つ」と説明されています。
タリバンの多くがルーツを持つパシュトゥーン族は、紀元前2000年ごろ、西アジアから移動してきたアーリア系の人々に、イランやモンゴルの人たちが流れ込んだ民族で、イスラーム教よりも古くから存在する掟・パシュトゥーンワーリーに従って生活しています。
この掟には、
・訪問者には見返りを求めずおもてなしすること
・敵から追われているものを命を懸けて助けよ
・いかなる犠牲を払ってでも女性を守ること
・他人の妻や娘に対して関心を示さないこと
といった約束事が含まれています。
タリバンは大規模な組織ではあるが統一されているわけではなく、地域ごとに小さな組織が無数にあるとのこと。それぞれのリーダーがその地域内で権力を振るうため、地域ごとに規則が異なるのだとか。また、厳しい縦社会であることもタリバンの特徴の1つです。
タリバン兵士と48時間生活する
カンダハールに到着した翔太はまずタリバンの人間と交渉し、街で撮影をする許可を得ました。この街では、部外者は何をするにもタリバンの許可が必要不可欠なのだそうです。
敬意を表すためのターバンを巻き、向かったのは「タリバン軍の基地」。翔太はここで、タリバンの兵士たちと48時間の共同生活をするといいます。基地とはいっても一般の住宅とそれほどつくりは変わらないようです。
案内された基地の地下には兵士たちの寝室がありました。この部屋には、緊急時に応戦するための銃器や、身を隠すための隠し扉が備えられています。武器庫に保管されている弾薬や武器、ブーツといった軍用品の多くは、かつてこの地に駐在したアメリカ軍が去るときに残していったものなのだそうです。
翔太は「米軍が去った時に全部、武器とか置いていったみたいです。なんか全然意味が分からないですね。なんで置いていくのか。敵に武器を与えるようなものじゃないですか」と疑問を感じたようです。
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マドラサ(神学校)の見学
軍の基地を見学した後は車で街に出ます。
基地を隅々まで見せてくれた挙句、次は車で街を案内してくれるというもてなしぶりに、翔太は
タリバンの人たちのおもてなしにはほんまビックリしてます。普段できないような体験も「日本からわざわざ来たから、見せてあげる」っていう感じで。全然ね、僕がアフガニスタンに来る前に持っていたタリバンの人たちの印象とは180度変わる滞在ですね
と少し驚いた様子です。
イスラム教の神学校・マドラサでは、机に座った子どもたちがコーランの暗記に励んでいます。先生の話では、ここには20人の教師に対して約600人の生徒がおり、3~4年かけてコーランを完全に暗記するのだそうです。コーラン以外にも数学やコンピュータの勉強も教えられているのだとか。
コーランとムハンマドの伝承「ハディース」を合わせた規範が「シャリア(イスラーム法)」として体系化されていますが、この「シャリア」にはいくつかの段階があり、厳しく禁止されていること「ハラーム」、義務ではないが、した方がいいこと「マンドゥーブ」、どちらでも良いもの、許されること「ムバーフ」に分けられるそうです。
翔太は、
イスラム教徒の生活が厳しく縛られ身動きができないとの印象が一般的にあるなか、実際には「義務」と「禁止」の間の「しないほうがいい」「したほうが良い」「どちらでもいい」 といった法律の方が圧倒的に多く、個人の判断のもと、生活を送っているみたいです
と解説しました。
もてなしを受けた感想「1人の人間として平等に話せる」
アジトに戻った翔太は兵士たちと一緒に食事を取ります。平たくて大きなパン1枚とヨーグルトのような飲み物、兵士たちが自分で育てたナスの炒め物などが振る舞われました。ゲストには特別な食器が用意されています。炒め物をパンにはさんで食べた翔太は、「うまい、油が最高」と感想を述べました。
タリバンの人々の生活に密着した翔太は、動画で紹介するには多すぎるほどの学びがあったといい、
タリバンはイスラム教を強要してくるのかと思っていたんですが、そんなことは一切なくてただただ1人の人間として平等に話せるというか「あなたの文化を尊重するし、僕たちは僕たちの文化でこうやってやっていますよ」それを、日本から来た僕に直接、リアリティとして共有してくれている感じです
とコメントしました。
また、タリバンの兵士から、米軍と実際に戦ったときの生々しい映像や話を見聞きした感想として
僕たち普段生活し、得ている情報っていうのはアメリカや西側諸国寄りの情報なんだなってすごい感じました
と伝えています。
この動画のコメント欄では、
こう言うのを見るといかに知らされてる事実が少ないか実感できるな…
ショータさんがすごいのは、常に相手へのリスペクトを忘れないところ。それがこのような素晴らしい取材を実現させているのだと感じます。貴重な映像をありがとうございます。
自分が理解できないから、と「善と悪」に分けてしまうのはよくないな、と感じる動画。
世界は異なるもので成り立ってるんですもんね。。。
といった反応が寄せられていました。

記事提供元:YouTubeニュース | ユーチュラ
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