日本初の「雹(ひょう)災緊急アラート」車両を守る!ひょうカバーも開発:ガイアの夜明け
更新日:
イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
注目の旬ニュースを編集部員が発信!「イチオシ」は株式会社オールアバウトが株式会社NTTドコモと共同で開設したレコメンドサイト。毎日トレンド情報をお届けしています。
10月18日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「シリーズ異常気象② 私たちの暮らしを守る!」。今、日本で深刻度を増している気象災害。その件数の増加と経済損失は、大きな社会問題になっている。
豪雨、突風、雷、雹(ひょう)…こうした異常気象に、独自の技術と経験を生かして立ち向かう日本企業の挑戦を追った。
【動画】日本初の「雹(ひょう)災緊急アラート」車両を守る!ひょうカバーも開発
災害時の知られざる仕事人 “損害保険登録鑑定人”の奮闘
8月下旬に発生した台風10号は、ゆっくりした速度で列島をジグザグに横断。記録的な大雨となり、台風と離れた地域にも被害が出た。
神奈川県の一部では観測史上最大の雨量を記録し、二宮町では川が氾濫。近くの住宅では床上浸水の被害もあったが、この辺りではめったにない事だという。地元住民は「腰ぐらいまで水が来ていて、車が2台ともダメになった。車両保険に1台しか入っていなかった」と頭を抱える。こうした予期せぬ被害を受けた時のために入っておくのが、保険だ。
東京・千代田区に本社を構える「三井住友海上火災保険」は、大手損保4社の一角。ここは災害時の保険金の算定や支払い手続きなどを行う「災害対策室」という重要な部署だ。
中島有美さんは、重要な役割を担う損害保険登録鑑定人の一人だが、会社の社員ではなく、鑑定事務所から派遣され、公平・中立な立場で保険金を算定している。鑑定人になるには資格が必要だが、1級の合格率は10パーセント未満という難関だ。
この日は、台風10号で被害を受けた屋根を鑑定。保険加入者から送られてきた見積書と写真を見比べながら、瓦の費用として適切かどうかを見た結果、認定が下りた。修理代として約48万円、写真で確認できた部分は満額の補償金が支払われる。
中島さんは「大規模な災害が生きた時は、現地に行くこともある。写真を撮るのが難しいこともあるので」と話す。
石川・金沢市。三井住友海上は、能登豪雨発災直後に鑑定人の派遣を決めた。具島信介さんは福岡県の鑑定事務所に籍を置く、この道24年のベテラン。三井住友海上が鑑定人の調査を必要とする契約は約200件あり、先遣隊として具島さんたち4人が2日間調査。それを基に、その後に続く能登豪雨の損害調査方針を決める。
具島さんは、元日の地震の際も鑑定に参加。被害を受けた人と保険金についてのやりとりを重ねるシビアな仕事でもあり、「できるだけ多く欲しいという方もいる。そういう方に対してどう接すればいいか。正論だけでは難しいところがある」と話す。
具島さんは、能登豪雨による被害の保険金を算定するために、輪島市の住宅街を訪れた。
築約40年木造2階建ての民家の家主・舟板廣さんは、水災補償付きの火災保険に入っていた。
当時は川の水が舟板さんの家を襲い、重い冷蔵庫が流されるほどの勢いで、メジャーで測ると床上60センチほどまで水が来ていたことが分かる。傷んだ畳は処分され、床下がむき出しの状態。具島さんの鑑定が他の被災者に支払われる保険金にも影響するため、慎重な調査が行われた。
保険金の額は鑑定人が算定するが、支払うのは保険会社だ。火災保険料は近年上がり続けているが、10月より、大手損保4社も10パーセント前後の値上げに踏み切った。頻発する自然災害が大きな要因になっていた。
三井住友海上火災保険 損害サポート業務部 部長の鈴東公一さんは、「(値上げは)非常に申し訳ないと思うが、やむを得ない。ただ単に保険金を支払うだけでは保険会社の使命を果たせない。事故が起こらない、災害の被害を最小限にとどめることが、保険会社にとってもお客様にとってもウィンウィンの関係になる。そういう取り組みも併せてやっていくことが今後の継続につながる」と話す。
AIの力で“ゲリラ雷雨”を予測しろ! ウェザーニューズの進化
災害のリスクを最小限に抑えることにまい進する企業がある。ウェザーニューズの従業員数は、気象予報士を含む約1000人。1986年、船舶向けの気象情報を提供するために設立され、現在は気象データを各航空会社や鉄道各社などにも販売。年商220億円(2023年)企業に成長した。
気象予測アプリ「ウェザーニュース」も好評で、ダウンロード数は約4500万件(2024年9月時点)。アプリのゲリラ雷雨を捕捉できる確率は90パーセントで、最近精度が上ったという。そのカギは、全国1600地点から送られてくる「ソラカメ」で捉えたリアルタイムの動画。3月から、これらの動画を予測に活用している。
東京・練馬区在住の三宅夏樹さんは、ウェザーニューズのアプリ利用者で、自宅にソラカメを無償で設置している。三宅さんは「自分が住んでいる地域の予報の精度が上がってくれる事を期待している」と話すが、まさにこうした協力者から送られてくる動画が、予測の精度を上げているのだ。
さらに、全国から送られてくるソラカメの映像から、ゲリラ雷雨に発達しそうな雲をAIが選出する技術で、現在30分前に届けている通知を10分以上早めようと試みていた。
異常気象による被害が大きくなるにつれ、予測技術も進歩しているが、そんな中、どうしても予測できなかった気象現象が、被害が激増している雹(ひょう)だ。
予測困難な“降雹(ひょう)”に立ち向かう東芝70年の技術
群馬・みどり市は、赤城山の麓に位置する人口約4万8000人の町。こちらの家は、7月5日に降ったひょうによる被害で車庫の屋根にいくつも穴が空き、修理が必要になっていた。
屋根を打ち抜いたひょうは、発達した雷雲から降ってくる。昔から雷と空風が多い群馬県。この3年はひょう害が多く、住民たちは苦しめられてきた。
7月5日降ったひょうの大きさは5センチを超えており、大澤農園(みどり市)の大澤孝志さんは、「(ガラス温室では)片側だけで100枚ぐらい割れた。全体では約500枚」と被害状況を話す。修理費は約400万円かかったが、約8割を農業保険で賄うことができた。
ガラス温室を持っている農家60軒に被害が及び、全体では約5500万円の損害額(みどり市 集計)になったという。
ひょうは保険会社にとっても頭の痛い問題だ。9月19日、番組が三井住友海上で契約者向けサービスを開発する河北遼子さんを取材していた時、河北さんは「八王子で大きなひょうが降った」という連絡を受けた。
この時は、三井住友海上だけで約2000件の被害報告が寄せられ、約10億円の支払いが見込まれている。ひょう害への保険金の支払額が急速に増えているのだ。
「ひょう災の事故受付件数は、年間を通じて数百件くらいのレベルだったが、2022年度に入って、6月に降ったひょうの事故受付件数が1万件を超えた」と河北さん。
特に自動車保険への影響が大きく、ひょう災による事故の受付件数は、2020年に年間約350件だったものが、2023年には約1万7000件に急増。2023年度の自動車の保険金支払い実績は、約125億円に達していた。
そこで、東芝のエンジニア、和田将一さんが三井住友海上と組んで開発したのが、降ひょうの危険が高まったことを知らせる日本初の「ひょう災緊急アラート」。
この夏、群馬県で、「ひょう災緊急アラート」を使った実証実験が行われた。実験に参加したのは、「トヨタレンタリース群馬」(群馬・高崎市)。店で働く髙野真哉さんは、「当社でもひょう害車両が1100台を超えている」と被害状況を話す。
以前はなす術がなかったが、この店では、和田さんが開発したアラートを受信し、車にひょうが降る前に屋根の下に避難させるなどの対策を行っている。
さらに三井住友海上は、群馬県発祥の大手スーパー、ベイシアグループと連携し、ひょうカバーを開発。群馬県の保険加入者2万人に無償で配布し、車を守れるかを試していた。
日本初の「ひょう災緊急アラート」が出来上がるまで、和田さんは多くの試練を乗り越えてきた。不可能と思われていた“ひょうが降る予測”、一体どうやって可能にしたのか――。
この放送が見たい方は「テレ東BIZ」へ!
記事提供元:テレ東プラス
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。