未発売ウェッジを即投入しメジャー制覇 メーカー担当者が明かす古江彩佳の“クラブ観”「感覚の精度が…」【勝者のギア】
先週、フランスで行われた「アムンディ・エビアン選手権」で日本女子4人目のメジャー優勝者になった古江彩佳。クラブセッティングをともに作りあげているブリヂストンの中原創一郎氏が、新メジャー女王の“クラブ観”について明かす。
とにかく古江と接していて感じるのが「歴代のすごい選手と一緒で、感覚の精度が高い。重さ、長さ、角度など敏感に反応する。測り直すと、確かに言っている通りということが多いです」という点。その“繊細さ”で、クラブの持つポテンシャルを最大に引き出しているようだ。
今回のエビアンを前に、中原氏が驚かされたことがあった。「ウェッジの相談があったので、新しいものを送ったら、エビアンに持って行ってビックリしました」。大舞台を迎えるにあたり、50度と54度を刷新。ひときわ繊細な感覚が求められるクラブを、“ぶっつけ”に近い形で投入した。
とはいえ、もちろん闇雲にそうしたわけではないことは、長年、古江を見守ってきた担当者のこんな話を聞いても伝わってくる。「すごくこだわりがあって、自分で試したうえで性能のよさを感じないと替えない。特にショートゲームが生命線の選手ですし、距離など思い描いた通りに打てないと使ってもらえません」。つまりピタリとハマる一本を見つけたことになる。
このウェッジについては、まだ発売前のもので詳細については何も明かされていない。ただ形状を見ると、重心が高く、それによりスピン性能を上げる工夫がこらされている。またウェッジについては、こんな“裏話”も教えてくれた。
「ウェッジのヘッド交換の頻度が、アメリカに行ってから早くなりました。私がメジャー週などで日本から会場に行く時には、必ず(同モデルの別ヘッドを)持っていきました。日本よりも厳しいセッティングで戦っているんだな、ということが伝わってきます。日本よりも地面に小石や砂も多いし、溝の摩耗も激しい。ただ、そのシビアなセッティングで戦っているからこそ、道具にもさらにこだわりたいんだと思います」
それ以外は「あまりクラブを替えない」という古江らしく、開幕時から不動のエースが集まっている。ドライバーは同社の『B3 MAX』だが、これについてもテスト段階から「早く使いたい」と言っていたほどの一本だ。
「あのドライバーに替えてから、直進性が強まり当たりが厚くなりました。古江選手はアメリカで戦い始めてから、クラブの入射角が変わったんです。それにともなってスピン量も以前のクラブで3000程度あったものが、これに替えて2400~2500くらいに抑えられました。これによりランも稼げるし、風にも強くなって、トータルの飛距離も伸びています」
ドライビングディスタンスを見ると昨年は245.44ヤードだったのに対し、今年はここまで250.75ヤードを記録している。日本でフルシーズン戦った2020-21年シーズンが233.51ヤードだったことを考えると、この部分での渡米後の進化は明確。その部分に、さらに力を貸している一本ということも分かる。
「クラブに対しての基準がしっかりしています」という古江の要望をかなえようと、中原氏も日々、奔走している。「ずっともったいない試合が続いてましたし、いつ勝ってもおかしくないと思っていました。勝つための準備ができていたんだと思います。これまでも、もったいないボギーを消したら勝ってるじゃん! ってこともけっこうありましたもんね(笑)」。たっぷりとクラブの相談を受ける“準備”を整えながら、中原氏も古江の帰国を待つ。
【古江彩佳の優勝セッティング】
1W:ブリヂストン B3 MAX(9.5° / スピーダーNXグリーン 50S / 45.25インチ)
3W:ブリヂストン TOUR B JGR(15° / スピーダーNX50S)
7W:ブリヂストン B2 HT(21° / スピーダーNXブラック 50S)
4U:ブリヂストン B2 HT(22° / MCH 60S)
5U:ブリヂストン B3 MAX HY(25° / MCH 60S)
6I〜PW:ブリヂストン221CB(TR PROTO 85S)
50、54°:ブリヂストン プロトタイプ(MCI SOLID 85)
58°:ブリヂストン BRM2ウェッジ(MCI SOLID 85)
PT:テーラーメイド スパイダーツアーX
BALL:ブリヂストンTOUR B XS
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