『なるべく働きたくない人のためのお金の話』から学ぶ「生きる勇気」とは
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ライターのみならず、企画、広告、アドバイザリー等多方面かた引っ張りだこの藤原さんでも、「働きたくない…」と思うこともあるのだとか。そこで紹介してくれたのが『なるべく働きたくない人のためのお金の話』。「働きたくない」という願いは、“クズの思想”なのか。そんなことを考えさせられた一冊なんだそう!
イチオシスト:藤原 千秋
大手住宅メーカー営業職を経て住まいや暮らしの記事を執筆し20年以上。監修、企画、広告、アドバイザリー等の業務にも携わる。プライベートでは三女の母。
『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など著監修書、マスコミ出演多数。
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『年収90万円で東京ハッピーライフ』『20代で隠居 週休5日の快適生活』の著者・大原扁理のお金と人生について、ゼロから考えた記録
「働きたくない」なんて人前じゃ言えない! と思っている、まじめでまっとうな私たちは、しかし生きているのが楽しいですか? と問われたとき、答えに窮してしまいやしませんか? なんのために働き、お金を稼ぐのか? 生きるため。
でも、楽しみもなく生きるためにお金を稼ぎ、その額に嘆息する。足りないと思う。それはほんとうにそうなのでしょうか? 「働きたくない」という願いは、“クズの思想”なのでしょうか。そんなことを考えさせられた一冊です。
啄木、おまえしっかりしろよ、大黒柱だろ?
「働きたくない」「遊んで暮らしたい」……。心の奥底ではそう思っていても、おいそれと口には出せない。なぜなら、言っちゃったら最後、「人としてクズ」だと、周りの人に思われてしまうから。ほんとはクズなのがバレてしまうから。言えない。
されど働き続けるのは、やはりなかなかしんどい営みではあります。やはり。中学時代に教科書で読みましたね。石川啄木の、あの有名すぎる短歌。
はたらけど
はたらけど猶わが生活楽にならざり
ぢっと手を見る
「若い」というより「幼い」に近い年齢で、それだけに真っ当な正義感あふれる中学生だった私は、いや私以外の多くの方も読んだときそうだったんじゃないかと思いますが、「啄木、おまえしっかりしろよ、大黒柱だろ?」と、突っ込み、叱咤しました。
だって大人ってのは、そういうしんどさを引き受けるものでしょう? と。やや斜め上の方からの態度ですね。今思えば。
かくいう自分自身に「はたらけど はたらけど…」がしみじみ身にしみたのは、それから10年以上経ったあとのことで、「啄木、ごめん」と心底思いました。生活。生きることを維持するのって、子どものころに想像していた以上に、はるかに莫大な金額が必要で日々茫然とするばかりで。
そうして「はたらけど はたらけど…」を何年も繰り返し、「啄木、ごめん」と独りごちる私は、啄木が亡くなった年齢(26歳)をそろそろ20歳も上回ろうとしているのでした。そういう感覚って、これも私以外の多くの方にもあるんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
正直、やはり、なかなか、しんどくないですか。ここから、降りられないのって。
本書『なるべく働きたくない人のためのお金の話』の著者、大原扁理さんのことは、2015年に出版された最初の本『20代で隠居』のころに知りました。おそらくどこかでコラムニストの、辛酸なめ子さんが書かれたレビューを読んだのがきっかけだったと思います。
20代なのに「隠居」?! 隠居って何?! この本の存在に衝撃を受けた私は、同年の暮れに下北沢の「本屋B&B」で開催された「pha×大原扁理×鶴見済 それぞれの生きづらさの脱出法 『持たない幸福論』(幻冬舎)『20代で隠居 週休5日の快適生活』(K&Bパブリッシャーズ)刊行記念〜』」というトークイベントに足を運びました。
「働きたくない」と願いはクズの思想では全然ない
著者であり、生身のお三方の語る言葉を聞きながら思ったのは、「生きづらい」と思っているような人ほど、「生きること」そのものに対して真摯なんだなあ……ということでした。生きることを、稼ぎやお金の多寡に、安易に紐付けない。「だるい」というキラーワード? とともにある同イベント登壇者のひとり、pha(ファ)さんは「日本一有名なニート」と呼ばれ、「ギークハウス」というオタク系の人が暮らすシェアハウスを主宰したり、執筆活動をされているのですが、彼が面倒見のいい営業部長なら大原さんは哲学者。鶴見さんは皆のリーダーという印象で、既存の「たくさん稼ぐ=善」というベクトルとは逆の向きに、おそろしくクリエイティブなのだということが分かったのです。
「はたらけど はたらけど…」という言い訳で思考を止めているのは、ちょっとというか結構「ばか」の証左かもしれない。諸々「働きたくない」と願うことは、すなわちクズの思想というわけでは全然ないんだと、そのへんで私の認識は変わっていったのです。
と言っても「じゃあ何をどうしていったらいいのよ?!」と思われる方は、大原扁理さんの来歴や、暮らしのヒント満載の本書『なるべく働きたくない人のためのお金の話』を手に取られてみてはいかがでしょうか。きっと訪れるであろうパラダイムシフト!
アメリカにおける「こんまり」のブレイクからも垣間見えるように、イケイケドンドンではない、収入や住まいや暮らしをどんどん「縮小」させていく方向の考え方(ミニマリズム)は時代の趨勢で、もう世界的にも止められないでしょう。
でもそこに乗ることはまったく「後退」ではない。むしろ生きやすさや希望につながる進化であり、それを学ぶことで具体的な「生きる勇気」を、私たちは得ることができるのではないかと思っています。
DATA
百万年書房┃なるべく働きたくない人のためのお金の話
著者:大原扁理
判型:単行本
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。