人気の近鉄特急「ひのとり」は、のぞみより安くて豪華な設備が魅力
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コロナ禍にあっても大人気の近鉄の新型特急「ひのとり」。東北新幹線などの「グランクラス」並みの車内設備ながらリーズナブルな料金設定が人気の秘密なのだそう。鉄道ガイドの野田隆さんに「ひのとり」の魅力を詳しく教えてもらいましょう。
イチオシスト:野田 隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL・D51を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、「ヨーロッパ鉄道と音楽の旅」を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。All About 鉄道 ガイド。
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近鉄名古屋駅と大阪難波駅を結ぶ近鉄の新型特急「ひのとり」が大人気になっています。
6両または8両編成のうち先頭と最後尾はプレミアムシート車両で、通路を挟んで2人掛けと1人掛けのゆったりとした座席配置。座席はすべて、背もたれが前にスライドして倒れるバックシェルというシステムなので、後ろの人に気兼ねなくリクライニングできます。しかも、レッグレストもブラインドも電動式で、座席は本革、コンセントも全席に装備。
東北新幹線などの「グランクラス」にも匹敵する快適でゴージャスな空間にもかかわらず、料金設定は近鉄の通常の特急よりも900円高いだけ。破格のサービスといえます。
新幹線より安くて快適な「ひのとり」
名古屋と大阪を移動するとき、最速の手段は東海道新幹線になるでしょう。「のぞみ」なら所要時間は約50分、運賃と自由席料金の合算は5940円。一方、「ひのとり」は近鉄名古屋駅から大阪難波駅まで2時間8分、運賃とプレミアムシートの合算で5240円。「のぞみ」より700円安くなります。
「ひのとり」の所要時間は「のぞみ」の倍以上かかりますが、大阪のミナミ(難波・心斎橋周辺)が目的地なら話は変わってきます。
難波までは、新大阪駅で新幹線を降りた後、時間帯によっては混雑する地下鉄に15分ほど乗る必要があります。乗り換え時間や待ち時間を考えれば、最低でも30分は見ておいたほうがよいでしょう。
そうすると、トータルでの所要時間の差は30分あまり。1分でも早く着きたいなら別ですが、快適さを勘案すれば「ひのとり」での旅は決して冗長ではないと思います。それが、コロナ禍であっても「ひのとり」の乗車率の高さにあらわれています。
充実の車内サービス
「ひのとり」には車内販売はありませんが、プレミアムシート車両のデッキにはカフェスポットが。ここでは温かいコーヒー(200円)などのドリンクとスナックを購入できます。レギュラーシート車両の3号車には飲料の自動販売機もあります。
ワゴンによる対面販売でないので味気ないという見方もありますが、人件費を抑えて、リーズナブルな料金設定にしていることを考えれば、精一杯のサービスといえるでしょう。むしろ、何のサービスもない特急列車や新幹線が多いことを考えれば、健闘しているともいえます。
また、鍵のかかるロッカーや喫煙室など、多方面のニーズに応えた設備も設けられています。
そして、プレミアムシートの人気に隠れてはいますが、レギュラーシートのグレードの高さも特筆すべき点。JRのグリーン車レベルのゆったりとした座席は、もっと評価されていいと思っています。
今後、より気軽に利用できる存在に
近鉄は、「ひのとり」の車両をさらに増備して、2020年度中に、すべての名阪甲特急(近鉄名古屋駅~大阪市内の鶴橋駅間で津駅のみに停車する特急)を置き換える予定。きっちり1時間ごとの運行になり、より気軽に利用できるようになります。都市間連絡特急で観光的要素は少ないものの、木曽川・長良川・揖斐川の三大河川を豪快にわたり、三重県から奈良県にかけての山岳地帯を快適なスピードで駆け抜ける車窓は、実に見ごたえがあります。
「ひのとり」でのおよそ2時間の列車旅は、快適で思い出に残るものになると思います。
DATA
近畿日本鉄道┃特急ひのとり
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