【試乗】新型シトロエン C3の実燃費は? 都内〜富士往復300kmで「魔法の絨毯」の真価を問う
イチオシスト
都内〜富士往復300kmで新型シトロエンC3 HYBRIDを徹底試乗。実燃費18km/Lを記録した「魔法の絨毯」の走りは本物か?高速巡航から極寒の朝まで、日常使いで見えた仏車のリアルな実力を報告する。
以前、シトロエン C3の第一印象について筆を執ったが、今回はより実践的なステージへ連れ出すことにした。舞台は都内から御殿場、そして富士スピードウェイまでの往復約300km。高速道路、混雑した市街地、そして冷え込む山間部。
新型「C3 HYBRID」は、カタログスペックや短時間の試乗では見えてこない“生活の相棒”としての素顔を、この小旅行で余すところなく見せてくれた。
都会の喧騒を「いなす」軽やかさ
午前中の都内、C3のステアリングを握り走り出した瞬間に感じるのは、徹底された「軽さ」だ。ステアリング、ペダル、シフト操作に至るまで、すべての操作系が“羽のように軽い(feather light)”。
英国の辛口評論家なら「運転の楽しさが欠如している」と嘆くかもしれないが、日本の過密な交通環境において、この軽さは正義だ。先代から全高が上がり、SUVライクな着座位置になったことで視界は驚くほど良い。ボンネットの先端が見切りやすく、狭い路地でもストレスを感じないのだ。
ハイブリッドシステムの恩恵も大きい。1.2リッター3気筒エンジンに組み合わされた28bhpの電動モーターと6速e-DCT(デュアルクラッチ)は、発進時のもたつきを見事に消している。かつてのフランス車に見られたギクシャク感はなく、あくまでスムーズ。街中ではキビキビと走り、まるで自分が運転上手になったかのような錯覚さえ覚える。
東名高速:Bセグメントの常識を疑う
首都高から東名高速へ。ここで真価を発揮するのが、Bセグメント初採用となる「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)」だ。
路面の継ぎ目を越えるたび、「タン、タン」という軽い音こそすれど、身体に伝わる衝撃は角が取れ、丸められている。シトロエンが謳う「魔法の絨毯」という表現は、このクラスにしては決して大袈裟ではない。
ただし、すべてが完璧というわけではない。コストの制約か、遮音材が少しばかり不足しているようで、高速巡航時のキャビンは少し賑やかだ。また、大きな路面のうねりに対しては、車体がゆったりと揺すられる場面もある。ドイツ車のような「ビシッ」とした直進性とは異なる、フランス車特有の「たゆたう」感覚。これを“不安定”と捉えるか、“癒やし”と捉えるかで評価は分かれるだろうが、私は後者を取りたい。
一点、気になったのはセンターコンソールの小さなトグルスイッチ(e-TOGGLE)だ。R(リバース)やD(ドライブ)に入れる際、しっかりと押し込まないと反応しない時がある。急いでいる時の車庫入れなどでは、この「タメ」が少々ストレスになるかもしれない。
御殿場の冷気とフランス流の「おもてなし」
御殿場のホテルに到着し一泊。翌朝、富士スピードウェイへ向かおうと車へ向かうと、ボディには霜が降りていた。外気温は氷点下に近い。
「フランス車だし、暖まるまで時間がかかるだろうな」と高を括っていたが、C3は良い意味で期待を裏切った。エンジンを始動し、ヒーターを入れると、驚くほど早い段階で温風が出てきたのだ。
シートヒーター(MAXグレードに標準装備)の立ち上がりも早く、かじかんだ背中をすぐに温めてくれる。インテリアのコンセプトである「リビングのソファ」のような心地よさは、物理的な座り心地だけでなく、こうした温度管理の優秀さにも表れている。
ちなみに、インテリアの素材には硬いプラスチックが多く使われていることは否めない。ステランティスグループ内のヒエラルキーを守るためのコストダウンの跡は見受けられる。しかし、ダッシュボードのファブリックあしらいや、ドアハンドルの「Be Happy」といったタグ(デカール)が、チープさを“遊び心”へと巧みに変換している。一部メディアではこれを「気恥ずかしい(cringeworthy)」と評する向きもあるようだが、殺風景なビジネスライクな車よりはずっと愛着が湧く。
また、エアコン操作がタッチパネルではなく、物理スイッチとして残されている点は、声を大にして称賛したい。
ワインディングと燃費:リアリティのある数字
富士スピードウェイ周辺のワインディングロードでは、このクルマのキャラクターが明確になった。
ペースを上げると、ボディは明確にロールする(傾く)。近年の車がロールを抑え込む傾向にある中で、C3は「どうぞ傾いてください」と言わんばかりに、ゆったりと身を預ける。
決して「日曜日の朝に峠を攻める車」ではない。しかし、タイヤが路面を離さない安心感があり、リズムに乗ればその傾きさえも心地よいワルツのように感じられる。0-100km/h加速9.8秒という数字が示す通り、絶対的な速さはないが、息切れするようなパワー不足も感じない。
さて、気になる燃費だが、都内への帰路を含めたトータル300kmで、約18.0km/Lを記録した。
行きは渋滞、御殿場では暖房をガンガンに使い、山道も走った上での数値としては非常に優秀だ。カタログ燃費(WLTCモード 22.3km/L)には及ばないものの、我慢せずに走ってこの数値なら十分合格点だろう。
ただし、日本人として一つだけ苦言を呈したい。
メーターパネルの燃費表示だ。「5.6L/100km」という欧州式表示がデフォルトで、我々が慣れ親しんだ「km/L」への脳内変換には少々骨が折れる。ヘッドアップディスプレイ(HUD)はシンプルで見やすいだけに、このあたりのローカライズは今後のアップデートに期待したいところだ。
結論:不完全だからこそ、愛おしい
旅を終えて思うのは、新型C3 HYBRIDが「優等生ではないが、クラスで一番の人気者」のような存在だということだ。
ライバルであるヤリスやポロの方が、機械としての精度や静粛性は上かもしれない。内装の質感も高いかもしれない。
だが、C3にはそれらが持ち得ない「風変わりな(Quirky)」魅力がある。Bセグメントという制約の中で、快適性を最優先し、デザインで遊び、乗る人を笑顔にしようという明確な意思(Feel Good)が感じられるのだ。
364万円(MAXグレード)という価格は、昨今の相場を考えれば十分に競争力がある。ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が非搭載である点など、割り切りも必要だが、それを補って余りある個性がここにはある。
移動そのものを「安楽な時間」に変える魔法。それが、新型C3が日常にもたらす最大の価値なのだ。
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