【実録】知識ゼロからAIを使って家賃交渉に挑んだ!
イチオシスト

都市部を中心に家賃改定ラッシュが到来。AIフル活用で拒否交渉をした結果は?
物価上昇の波が、ついに不動産にも押し寄せている。本誌編集の元に届いたのは、家賃12%アップの通知。キツいけど、引っ越すのはイヤ! 泣き寝入りするしかないのか?
知識ゼロの状態から、AIを活用して家賃交渉に挑んだ全記録をここに残します。
それは突然やって来た。
今年4月、ポストに不動産管理会社からの書類が届いた。11月に控える次回の更新から家賃を12%上げるという。年間で30万円以上の出費増。頭がクラクラした。
僕が住んでいる東京都某区の物件はファミリータイプの2LDKで、家賃は22万円。大手不動産が手がけるマンションで、部屋数は100以上。最寄り駅から徒歩10分以上とアクセスは悪いものの、設備面は申し分ないため、一昨年11月、長く住むマンションとして入居を決めたのだった。
仕事柄蔵書も多く、前回の引っ越しは4tトラックを手配し、2日かけて段ボール120箱の荷詰めを行なった。もうあんな思いはしたくない! であれば、泣き寝入りするしかないのかぁ......。
「いえ、そんなことはありません。家賃の交渉は借り主に認められた立派な権利です」
背中を押してくれたのは、不動産仲介・管理とコンサル業を営む、『家賃値下げドットコム』管理人のウラカタさん。まずは何をすれば!?
「家賃値上げの書面が届いても同意せず、交渉したい旨を通達します。しかし、ただ『値上げに反対』と言っても、受け入れてもらうのは難しい。そこで、まずは交渉材料を収集・整理しましょう」

交渉材料って?
「まずは近隣物件と比べて、提示された家賃が高いことを示す必要があります。ポイントは同じエリアの物件の、空室の情報を示すこと。
入居者がいる物件を提示しても『この家賃でも住む人がいる』という証拠になってしまいますし、また、不動産の相場観はエリアによって大きく異なるからです」
物件情報は『スーモ』や『ホームズ』などのサイトで閲覧できる。便利なのは間違いない。それでも正直、調べるのはめんどくさいッ!
ところがこういうときに頼りになるのがAIだ。試しにChatGPTのディープリサーチ機能(時間をかけて、より深く、より精度の高い洞察を提供する機能。無料版でも月に5回まで利用可能)を使って近隣物件を調べさせたところ、『スーモ』などのリンク付きで、物件名や間取り、家賃、築年数などをまとめてくれた。

ChatGPTのディープリサーチ機能で周辺物件の賃料を調べさせた結果。内容もほぼ誤りなし。こいつ、デキる......
裏取りをしたところ、一部すでに募集が終わっていた物件もあったが、交渉材料としては十分! ウラカタさん、次は何をすれば?
「どんな小さなことでもいいので、住んでいて気づいた不満をまとめましょう。例えば、ごみ収集所のにおいが気になるとか、共用設備の清掃が行き届いていないとか」
それでいうと、最近宅配ボックスが埋まりがちで、荷物が届いても再配達をお願いすることが増えたんだよなぁ。
「そういうのでいいんです。管理会社には家賃アップの算定根拠を尋ねると同時に、現時点でも家賃収入が適切に活用されておらず、サービスが向上していないことを伝えましょう。
最後に、当該物件の空室率も調べておくとベターです。空室が多いということであれば、『相場に見合う家賃水準ではない』という主張を補強できますからね」

交渉に際して、物件の不満を伝えるのも手。筆者は宅配ボックスが埋まりがちで困っているということを交渉材料にした
準備は整った。あとは管理会社に連絡をするだけだ。
「伝え方としては、
・物件自体は気に入っているので、長く住み続けたいと考えている
・一方で、今回の値上げには疑問を感じている
・その根拠を示す
という流れでいいでしょう。最後に、希望の値上げ幅を記すのもいいと思います」
今回は、23年11月から現在までの物価水準を鑑みて、6%アップを主張してみた。なお、家賃の上昇率を減らしてもらうのはややハードルが高いため、例えば「エアコンの買い替え」や「更新料の減免・免除」などを要求するのも手だという。
文面についても、先ほどの材料と構成をAIに伝えて、「あなたは家賃交渉のプロです。大家さんに送る文を作ってください」と頼めば、立派な書面を作ってもらえた。
管理会社の問い合わせフォームには字数制限があったため、グーグルドキュメントで交渉書を作成し、その閲覧リンクを添付したのが8月末のこと。
ところで、そもそもこんな交渉をして大家さんに嫌われたりはしない......?
「大丈夫です。最初にお伝えしたとおり、家賃交渉は正当な権利ですから。
また、もし納得がいかない場合は、従来どおりの賃料を法務局の供託所に供託して住み続けるという手もあります。こうすれば賃料支払い債務を履行していると見なされ、勝手に退去させられることはありません。大家が納得しなければ調停や裁判で決着をつけるという流れです」
フォームに連絡してから数日後、管理会社から電話がかかってきた。ドキドキしつつ電話に出ると、いわく、「家賃は据え置きでいい」とのこと。6%アップどころか、値上げもナシ!?
どうやら会社のセキュリティ方針上、外部リンクを開いてはいけないらしく、私の文面だけ見て、家賃値上げを撤回することにしたそうだ。なんじゃそりゃ。
最初は満額以上の回答が引き出せたことにガッツポーズしたが、ただ交渉を申し出ただけで要求がいとも簡単に通ったことには拍子抜けしてしまった。それと同時に、「もし交渉していなかったら」と思うと、今でもゾッとする。
今回家賃交渉をしてみて、面倒な部分こそ、AIにかなり任せられると感じた。特に、時間がかかりそうなリサーチ部分を外注できるのはかなり大きい。
幸い自分は大きな集合住宅ということもあり、交渉をしたからといって管理人さんの態度が変わった、などということもなかった。
もし家賃値上げ通知が届いたら、ぜひお試しを! 交渉しなきゃ、一生後悔するかもしれませんよ。
写真/iStock
記事提供元:週プレNEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
