米国シニアツアーに参戦してから改めて得る“刺激と実感”「共感してもらえる瞬間を作りたい」【藤田寛之の“人生付録記”】
昨年の「全米シニアオープン」で2位に入り、米シニア「PGAツアー・チャンピオンズ」のプレーオフシリーズに進出。2戦目で3位に入りポイントを上積みし、今季のフルシード権を得た藤田寛之。この第二の人生とも言える挑戦を『人生の付録』と表す。そんな米戦記を追っていく。(取材/構成・高木彩音)
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みなさん、こんにちは。藤田寛之です。こちらにきて、約半年が経ちました。みなさんになかなかいいニュースを届けられず、悔しい日々が続いていますが、マネージャーの杉浦(翔晟)くん、キャディの小沼(泰成)くんの支えのおかげで、なんとか元気に過ごすことができています。2人が一生懸命サポートしてくれています。本当にありがたい存在です。
杉浦くんは鶏肉のグリルや、サーモンのクリームパスタなど、ほぼ毎日のように料理をつくってくれて、もう、うちの“シェフ”なんです(笑)。現場マネージャーですけど、料理も上手なんですよ。とても美味しい。ゴルフに集中できる環境をつくってくれて感謝しています。
さて、7月27日まで行われた「ISPS HANDA シニアオープン」(全英)について、少しお話したいと思います。結果は、予選落ちです。これまでの“全英”のコースはリンクスが多いイメージでしたが、今年のコースは日本に近い雰囲気もあって、すごくチャンスだと思っていたんですけど、僕が狙った場所にしっかり打てていないせいで、悔しい結果となってしまいました。
ティショットをミスしてラフに入れ、そこからフェアウェイに出して、ようやく3打目でグリーンを狙う――。そんな展開が多く、ボギーになってしまう流れが多かったです。ショットがとにかく曲がっていて、フィニッシュも取れないような状態でした。ここ2カ月くらい、僕なりに取り組んできたことの“評価のタイミング”だなとも感じています。
以前お話したフェードの方向性。フックしがちな自分にとってフェードを練習するという方向性は間違っていないと思うんですが、いろいろ“アプローチ”しても結果につながらない。ということは、そのアプローチ自体が間違っているか、根本的に“痒いところに手が届いていない”のかもしれない、そんなふうに思っています。ここまで試行錯誤してきましたが、今後はまったく違う角度から自分のゴルフを見直していく必要があると感じています。
そして、PGAチャンピオンズツアー(米国シニアツアー)に来てからいろいろな“刺激”を受けています。それはこちらの選手のみなさんはもちろん、チーム芹沢、芹澤(信雄)師匠、仲間の宮本勝昌、他にも本当に多くの方々に支えられていること。『藤田寛之』というゴルファーは、人と環境によってつくられてきた――いま、それを心から実感しています。
こちらの選手のみなさんからは、ゴルフへの姿勢、パワーやプレースタイルの面で考えを得ることが多いです。特に、パドレイグ・ハリントン(米欧ツアー通算20勝)や、2年連続で米シニアの賞金王になっているスティーブン・アルカーなど。飛距離があって、プレー内容も練習量も本当にすごいです。その一方で、ジョン・デーリーやアンヘル・カブレラのように、ほとんど練習をしないタイプの選手もいたり。
ベルンハルト・ランガーさんは67歳になっても、いまだに毎日練習場に来て、自分と同じくらいボールを打っている。K.J.チョイさんもそうです。そういう姿を見ると本当に刺激になります。自分の現役時代は、自分にムチ打って、必死に手綱を握ってプレーしてきました。でもシニアに入ってからは、「もうそこまでしなくてもいいかな」と少しゆとりを持って、楽しむスタンスに変えていたんです。
でも、自分よりも年上で実力もある選手たちが、いまだに全力でムチを打って戦っている姿を見ていると、背中を押されます。落ち込んでいるヒマはないなと。日本では、井戸木(鴻樹)さん、室田(淳)さん、倉本(昌弘)さんといった方々が、年齢を重ねても高いレベルでゴルフを続けている。本当に尊敬します。若い頃は後輩たちから刺激をもらっていたけれど、シニアになってからは、先輩方の頑張る姿に刺激をもらうようになりました。それがすごく不思議で、新鮮な感覚でもあります。
こちらの環境は素晴らしいです。コースも、選手たちも、すべてが刺激的。この場所で爪痕を残したい、暴れたい――そんな思いもありますし、「楽しむこと」も忘れずにプレーしたいと思っています。ただ、日本で応援してくれている方々に良いニュースを届けられないのが、すごく歯がゆい。
「行って、頑張っているだけでもいいよ」と言ってくれる人もいますが、やっぱり「よかったね」と共感してもらえる瞬間を作りたい。そのために、こちらで必死にもがいてますが、這い上がろうとすればするほど、沼にはまっていくような感覚もあって…。
そんな話を先日、宮本と電話で話したりもして。月に1回くらい電話をくれるんです。宮本は全英の週に日本で行われていた「倉本昌弘 INVITATIONAL EAGLE CUPシニアオープンチャリティートーナメント」で連覇、今年2度目の優勝を飾りました。本当に彼はすごい。全米プロシニアや全米シニアオープンにも来てくれて、一緒に練習ラウンドをしたり、いろんな話ができたりと、すごく充実した時間を過ごせたのが、とてもうれしかった。
今はもう、“宮本勝昌”という人間を求めている自分がいます(笑)。一緒に練習したり、ゴルフについて語ったり、そんな時間が懐かしい。今は少し苦しい状況ですが、ここをなんとか乗り越えたい。60歳までは、現場でしっかり頑張っていきたい。気持ちを切り替えて、今週からの3連戦も頑張ってきます! みなさん、応援していただけたらうれしいです。
<ゴルフ情報ALBA Net>
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