少女が手放そうとしない呪いのテディベア それが仕掛けてきた恐怖のゲーム 『イマジナリー』
飯塚克味のホラー道 第102回『イマジナリー』
ホラー映画を年に何本もリリースするブラムハウスから、また新たな作品がやってきた。今回は、少女の空想(イマジナリー)が生んだ、恐るべき存在が話の中心になっている。3月に先だって公開された北米では、オープニング成績990万ドルで3位スタートのスマッシュヒット。最終的には、アメリカで2800万ドル、海外で1570万ドルの興収を上げている。製作費はいかにもブラムハウスらしい低予算の1300万ドルなので、十分黒字になっているのもさすがだ。
娘が二人いる男性と結婚し、かつて自分の実家だった家に移り住んできたジェシカ。年頃の上の娘テイラーからは反抗期で距離を取られているが、下の娘アリスは素直な性格で、継母のジェシカにもなついてくれている。だがしばらく経つと、アリスはテディベアのぬいぐるみをチョンシーと名付け、会話を始めるようになってしまう。最初は静観していたジェシカだが、チョンシーから指示されたと言って、不可解な行動を取り始めるようになるのだった。
監督は『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』(2013)のジェフ・ワドロウ。ブラムハウスで作ったスリラー『トゥルース・オア・デア ~殺人ゲーム~』(2017)や、昔のテレビドラマを映画化した『ファンタジー・アイランド』(2020)など、大規模ではないが、高評価を得た作品を作り続けている。出演は主人公のジェシカにディワンダ・ワイズ。『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(2022)で、飛行機のパイロットを演じた人物と言えば思い出す人もいるはずだ。
本作の魅力は、脚本の緻密さに依るところが大きい。微妙な関係の家族構成に始まり、怪しげな近隣住民の存在も映画への関心を高めることに成功している。ジェシカの父親は、認知症で施設に入っている。同様の家族を抱えている人なら、ジェシカに感情移入せずにはいられない。そんなジェシカが謎の存在におびえながら、新しい家族との絆をしっかり紡ごうとする姿は感動的ですらある。
見せ場の割り当ても、バランスが非常に取れている。冒頭、絵本作家でもあるジェシカが自身の描くキャラクターに夢の中で襲われるオープニングはスリル満点だし、中盤のミステリアスな展開も、気持ちを持っていかれる。後半はVFXを駆使した見せ場の連続が控えているので、派出な映画がお好きな方にも十分満足してもらえるはずだ。タッチとしては『インシディアス』シリーズ(2010~2023)や、『コララインとボタンの魔女』(2009)を思わせるところもあるので、鑑賞後、比較してみるのもいいと思う。
いずれにしても映画の職人たちが、基本をきっちり守り、ギュッと濃縮したらこれだけのものができるという好例にもなったのは、ジャンル映画のファンとしては感無量だ。是非、音のいい映画館で本作を観てもらいたい。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【作品情報】
イマジナリー
2024年11月8日(金)より全国公開公開
配給:東宝東和
©2024 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
記事提供元:映画スクエア
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